暴落 = プット・バック・スプレッド、と脊髄反射してはいないだろうか。今回はそんな思い込みを180度変えるレポート。
2013年のある日、※「ギルド集会所」での会話。クズOP職人であるギルドの始祖(お師匠さま)が言った。
「プット・バック・スプレッド は、そこらの暴落では儲からないですね。」
シーン……何を言っているのだろうか。教科書に書かれている「プット・バック・スプレッド」の解説とは明らかに正反対の言葉に、我々は意味が分からず戸惑った。ギルドの始祖は続けて、
「だってそれが究極的な暴落でもない限り、ファー(FOTMプット)は吹かないですよね?ほとんどの暴落ケースでは、売ったストライクのプレミアムは跳ね上がり、買ったストライクのプレミアムは変わらずとか、ヘタすれば減価。プット・バック・スプレッド は股裂きとなりませんか?」
確かにその通りだ。巷では「プット・バック・スプレッド」は死んだ、とすら言われている。
「暴落時に スマイルキャッチャー で シミュレーション でもやってみれば良く分かりますよ。僕の場合の プット・バック・スプレッド の狙いは教科書とは全く違います。それはこういうことなのです……」
この日、深夜まで続いた「ギルド集会所」でのディスカッションは今でも忘れない。脳天から雷に打たれたような衝撃を受けた。当時、古典から新刊まで、重厚なものから安っぽいものまで、専門書を50冊以上は読み込み学んできた(つもり)オプション取引の常識、というか思い込みが180度ひっくり返った。
「ギルド集会所」で学んだ「教科書には書かれていない」「理論と実践の違い」は「プット・バック・スプレッド」以外にも多数。そうだ、これを総称して「ギルドの訓え」と呼ぶことにしよう。
それでは現場の様子を詳しく見ていこう。
※正確には「ギルド集会所」の前身である「集会所」での会話
2019.06.07(金)19:20 プット・バック・スプレッド 欧州市場午前
来週はMSQ週となり期近は残存が乏しいことから、期先で「プット・バック・スプレッド」をエントリー。残存が長いとIVの動きは緩慢となるのだが、こればかりは仕方がない。寝ているskewの立ちを取りに行きます。この後21:30に「NFP」が控えている。
2019.06.08(土)05:00 NY市場クローズ
「NFP」は波乱なく通過。発表直後に100円程度の下押し後すぐに戻し、日経平均先物はそのまま21000円を回復。「プット・バック・スプレッド」は「週越え」。
2019.06.10(月)15:10東京市場クローズ
MSQ週。週明け月曜日の東京市場は上窓ギャップで寄り付くも、その後は特に目立った動きナシ。
期先のスマイルカーブは若干ではあるが「上げのP盛りC剥げ」の動きが出てきた。ポジションは「プット・バック・スプレッド」をホールド。
2019.06.11(火)10:00 タイマー注文の観測
1907コール21750にタイマー注文の観測。15秒毎に1枚、売り板にぶつけて上値を買っている。売り越している先物を雑に買い戻す前兆か。
2019.06.11(火)10:30 ミニ買い新規建て
「ミニ買い」を新規エントリー、デルタをロングに傾けます。ポジションは「プット・バック・スプレッド」と「プロテクティブ・プット」のハイブリッド。
2019.06.11(火)15:00 東京市場クローズ
火曜日の東京市場も特に目立った動きはナシ。買戻しの流れ。
2019.06.11(火)21:40 欧州市場午後
NSに入り日経平均先物は一段高。「上げのP盛りC剥げ」効果により期先のFOTMプットが盛り始め、skewが立ってきた。日経平均先物はそろそろ上値が重くなってくる水準、21500円が近づいてきた。この後NY市場がオープンして崩れてしまう前に返済をかけていこう。
2019.06.11(火)21:50 全返済
「プット・バック・スプレッド は、主に(日経平均先物の)上昇によるskewの立ちを狙っていくスプレッドですよ。」
わたしは一語一句を逃すまいと必死にメモを取った。もしや今この瞬間、わたしは一生ものの売買技術の教授を受けているのではないだろうか、そう思った。
「その際に教科書的な プット・バック・スプレッド は役に立ちません。ITM~NTM(ニア・ザ・マネー)を売り、10円以下のクズ化したFOTMプットを買う。つまりそれぞれのストライクはしっかりと離す。すると比率は-1:+30~+100超となるでしょう。」
教科書的な「プット・バック・スプレッド」とは、少し(500円や1000円程度)ストライクを離し、-1:+2~+3程度で組まれたデルタ・ニュートラルの「プット・バック・スプレッド」のことを言う。お手本通りの「プット・バック・スプレッド」ということ。役に立たない「プット・バック・スプレッド」は、同じ局面では役に立つ「プット・レシオ・スプレッド」と言うことだろう。
あの日「ギルド集会所」でギルドの始祖は、今まで誰も語らなかった「プット・バック・スプレッド」の真価を訓えてくれた。
ようするにプロが実行する実践的な「プット・バック・スプレッド」とは、ITM~NTM売り+FOTM大量買いで組み、暴落うんぬんの話ではなく「skewの変化」(skewの立ち)を狙いに行くものだ、ということ。
そしてskewが立つのは一般的に先物の上昇局面であり、それは「上げのP盛りC剥げ」が作用している。暴落でskewが立つことは究極的なケースだけ。良くある程度の暴落では「下げのP剥げC盛り」となってしまいskewは寝てしまう。だから「暴落 = プット・バック・スプレッド」と反射的に飛びついても、大体はウマくいかない。
それでは「プット・バック・スプレッド」を使って利益を上げやすいタイミングとは先物の上昇局面ですね、ということ。
「暴落 = プット・バック・スプレッド」と脊髄反射してはいけない。正しくは「skewの立ち = プット・バック・スプレッド」なのだ。ここを勘違いすると、スプレッドを使う局面が変わってきてしまう。
更にギルドの始祖はこんなことも付け加えている。
「上昇局面では、コール裸買い + プット・バック・スプレッド、下落局面では、プット裸買い + コール・バック・スプレッド、このパターンは良く使いますね」
今回のトレードも「ギルドの訓え」に倣い、「コール裸買い」の代わりに「ミニ買い」を使い、「ミニ買い」+「プット・バック・スプレッド 」を実行した。
以下の過去レポートでも同様のことを言及しているので、合わせてご覧いただければと思う。
「プット・バック・スプレッド」にとって本当にうれしいのは、先物の上昇だ。そして下落に弱い。この事実は「教科書には書かれていない」(なんなら正反対に解説されている)ギルドの訓え、理論と実践の違い。
これは「上げのP盛りC剥げ」、「下げのP剥げC盛り」の原則が関係している。「ブラックスワン」級の暴落があれば原則が崩れるので話は別だが、このポジションを実践したことがあるトレーダーなら良く意味がわかると思う。
で、色々とゴチャゴチャ書いてはいるが、一言で言ってしまうと「skewの変化」のこと。先物が上げるとskewは立ち、下げるとskewは寝る。
それでskewの立ちを取りに行くのが「プット・バック・スプレッド」、skewの寝を取りに行くのが逆符号のスプレッドである「プット・レシオ・スプレッド」。ただこれだけの話。
Lv0023【skewの変化を見ていると……プット・バック・スプレッドを組むタイミングを解説(第1幕)】+924,000円今回のレポートは世界同時株安の局面で七転八倒している様子がうかがえる。単純に暴落=「プッ……
1セットのショッポいポジションでも、これくらいの利益が出れば十分だ。先物上昇+剥げというこの状況で「プット・バック・スプレッド」がなぜウマく機能したのか、上のスマイルカーブの画像を参考にしてもらえればと思う。
今回はシミュレーションとしてはとても分かりやすい好例で、起きもしない暴落を期待して「プット・バック・スプレッド」を組むより、今回のような局面で使っていく方がスプレッドの相性が良く感じる。教科書には書かれていない、ギルドの訓え。理論と実践の違い。
Lv0034【プット・バック・スプレッド|米中間選挙2018開票速報ザラ場直撃イベント】+50,000円(シミュレーション)「イベントプレイ」と言えば「プット・バック・スプレッド」。古典的ではあるが、オプションを……
全返済完了。明日は「魔水」だ、次のチャンスに備えていこう。
1906M @+2qty 21170.00 JPY -> close 21320.00 JPY (+30,000 JPY)
1907P20750 @-1qty 330.00 JPY -> close 195.00 JPY (+135,000 JPY)
1907P17500 @+30qty 9.00 JPY -> close 6.00 JPY (-90,000 JPY)
This profit and loss +75,000 JPY
Total profit and loss +75,000 JPY