今回のレポートは05SQ日、東京市場でSQを通過した後、NSのNYタイムで「フルヘッジ・ブル・シンセティック」を取った記録。
「フルヘッジ・ブル・シンセティック」や「フルヘッジ・ベア・シンセティック」は「ボラティリティ・トレード」の学び始めの初期から使う基本的なスプレッドの一つ。
ミニを当てて「デルタ・ニュートラル」にしたスプレッドになぜ損益が出るのか、この理屈は必ず押さえておこう。「教科書には書かれていない、理論と実践の違い」を理解すれば、相場のアゲサゲの当て物だけでしかなかった雑なオプション・トレードは劇的に改善すると思う。
さて、今さら言うまでもないと思うが今回の「フルヘッジ・ブル・シンセティック」のポジション構成は以下の通り。
コール買 + プット売 + ミニ売り = フルヘッジ・ブル・シンセティック
以前のレポートPr0012【プット・コール・パリティ】守護神と破壊神をざっくり解説【日経225オプション取引】で掲載したプット・コール・パリティの早見表を覚えているだろうか。
ミニ買(+10) = コール買(+1) + プット売(-1)
ミニ売(-10) = コール売(-1) + プット買(+1)
鋭い方はすでにお気づきのことかと思うが、この「フルヘッジ・ブル・シンセティック」や「フルヘッジ・ベア・シンセティック」、同じ限月の同じ権利行使価格でプットとコールを組み、ミニでデルタを当ててフルヘッジ(デルタ・ニュートラルに)するとプット・コール・パリティのスプレッドとなる。
ミニ買(+10) = コール買(+1) + プット売(-1)
この等価式によると「コール買(+1) + プット売(-1)」は「ミニ買(+10)」と等価なわけだから、このポジションに追加してミニを10枚売れば完全に損益ロックの状態となり、プット・コール・パリティが成立するということ。
何が言いたいのかというと、この損益ロックの状態から、プットやコールをそれぞれOTMにずらし、リスクの要不要に応じて枚数を変化させたものが「フルヘッジ・ブル・シンセティック」や「フルヘッジ・ベア・シンセティック」であるということ。だから原型はプット・コール・パリティのスプレッドなの。
先日の「パンローリングチャンネル」の動画内で以下のように申し上げた。
将棋やチェスの初期配置(プット・コール・パリティ・損益ロック)からスタートし、少しコマを進めるとゲームに評価損益が生まれる、オプション取引の面白いところナリ。それで先のトークの回収、ミニを当てて「デルタ・ニュートラル」にしたスプレッドになぜ損益が出るのか、この理屈は必ず押さえておこう。
(参考レポート:【プット・コール・パリティ】守護神と破壊神をざっくり解説)
(参考レポート:「オプション専業トレーダーの源泉」ゑもんさん/トレーダーズワールド2023 日経225micro・日経225ミニオプション取引スタート記念イベント)
ああ、言い出したらつい筆が止まらずまた前置きが長くなってしまった。それでは詳しくオプション・トレードの現場の様子を見ていこう。
2023.05.13(土)00:15 NY市場午前【フルヘッジ・ブル・シンセティック新規建て】
まずここ最近の先物日足チャートから。
今朝の東京市場で05SQを「29,235.08円」で通過した先物はNSのNYタイムに入りこの時間+60円ほど。日中に「上げのP盛りC剥げ」から少し剥げ始め、ATM中心の「上げの全盛り」へと微妙に変化してきたところで、レーダーが反応。
以下の画像、スマイルカーブ上にプロットされたオプション建玉のストライクの位置に注目していただきたい。日中盛りまくったFOTMプットを売り、まだギリギリ盛っていないOTMコールを買っている。そしてミニ売りを入れデルタを消し、デルタ・ニュートラルの「フルヘッジ・ブル・シンセティック」を組んだ。今回もしっかりと丁寧に「ボラティリティ・トレード」を行っていこう。
もし週明けも先物の上昇が続けば「上げの全盛り」継続でギリギリ盛っていなかったコール買玉は盛りWIN、先物が下落すれば「下げのP剥げC盛り」でやっぱりコール買玉は盛り、プット売玉は剥げるのでWIN。三対二の法則、ギルドの訓え。
なお同様の意図でスプレッドを組むのであれば、「ロング・ストラングル」系や「リバース・コール・カレンダー・スプレッド」なども考えられる。スマイルキャッチャーなどを使って同時にシミュレーション・トレードしてみるとよいと思う。
このままポジションを週越えさせていこう。
2023.05.16(火)13:55 東京市場後場【ホールド】
週が明けて火曜日、先物は連騰し上昇相場継続。この時間は+200円ほど、スマイルカーブは本格的な「上げの全盛り」相場が到来。ホールド中の「フルヘッジ・ブル・シンセティック」はペイオフダイアグラムの右山の登攀を開始、評価益が乗ってきた。このままホールドしていこう。
(補足情報:twitter)
これが「上げの全盛り」。通常は先物↑で上げのP盛りC剥げとなるけど新高値取ってなお↑が続くとP盛りに引っ張られたATMも盛り始め、CのFOTMまでも連鎖盛り。C売筋や先物S筋が焦ってカバーしている様子を感じ取ってみて。上げの全盛りは長くても3日ほどで鎮静化。盛ったCを買う時はハゲ損を覚悟しる。 pic.twitter.com/7peEjKGw44
— ゑもん🐾日経225オプション (@Emon201) May 16, 2023
(補足情報:twitter)
ハゲ損=こちらの画像はスマイルキャッチャーの一部。06C31000のプレミアムは70.68円、ベガ値は17.69。だから06C31000のIVが1%剥げると-17.69円の評価損が出るよ。逆に1%盛れば+17.69円の評価益が乗るよ。オプションを触るときはこういったグリークスの値も必ず確認しよう! #OPレベル上げ pic.twitter.com/3QYi9UUpCh
— ゑもん🐾日経225オプション (@Emon201) May 16, 2023
2023.05.17(水)14:30 東京市場後場【ホールド】
翌日水曜日、この時間の先物+250円ほどで30000円の大台に乗せてきた。スマイルカーブは「上げの全盛り」2日目、skewは強烈に立ってきた。ホールド中の「フルヘッジ・ブル・シンセティック」の評価益はさらに上乗せ。
もはやこの「フルヘッジ・ブル・シンセティック」の主レッグは盛り盛りのコール買玉。満期までに残存たっぷりのためにガンマとセータはまだまだ小さいが、ベガ値は47円と巨大化しているので1%でも剥げられるとスプレッドの評価益は半分程度になることがわかる。先物の上昇によりここまで盛ってきたのだから、下げれば剥げる。
「上げの全盛り」相場の賞味期限はだいたい3日間なので、もう少しは利が伸ばせるのかもしれないが、スプレッドの(デルタとベガの)巨大化により評価損益は相場のアゲサゲ頼みとなってしまった。ポジションを一旦リセットするためにもそろそろ返済注文を入れ、利益をポケットにしまおう。
(補足情報:twitter)
「上げの全盛り」2日目だよー期近IVは14%台まで上昇。 #OPレベル上げ pic.twitter.com/eiTC90hPeh
— ゑもん🐾日経225オプション (@Emon201) May 17, 2023
(補足情報:twitter)
FOTM買×ATM売のプットバックスプレッド大勝利の図がコレ。先物上昇+230円のオプションボードとスマイルカーブ、プットの盛り方にご注目。FOTMプットはデルタに対してベガ効果が上回りプレミアムはヨコor上昇、ATM~OTMは減価、これでWIN。クズOP大量買い仕込みの理由の一つだよ。 #OPレベル上げ pic.twitter.com/DOoNwkHy0V
— ゑもん🐾日経225オプション (@Emon201) May 17, 2023
2023.05.17(水)14:40 東京市場後場【全返済】
全返済完了。今回の「上げの全盛り」相場で「フルヘッジ・ブル・シンセティック」は最適解のスプレッドではなかったかもしれない。でもトレードで100点なんて目指さなくていーのよん。次のチャンスを探していこう。
2306C31000 @+2枚 建値 29.00円 → 返済 135.00円 (+212,000円)
2306M @-2枚 建値 29480円 → 返済 30080円 (‐120,000円)
2306P26000 @-3枚 建値 18.00円 → 返済 19.00円 (-3,000円)
今回確定損益 +89,000円
合計確定損益 +89,000円