今回のレポートは日中前場に「プロテクティブ・プット」を取り、NYタイムに返済したデイトレ的トレード。2回に分けて書いていこう。変形ナシのストレートなスプレッド・トレードだ。
それではオプション・トレードの現場の様子を詳しく見ていこう。
2020.01.30(木)10:55 東京市場午前
木曜日の東京市場は-0.5%ほどの反落スタート。寄り付き前に「WHOは緊急事態宣言について話し合う会合を21:30JSTに開く予定」とのアナウンスが伝わっている。今晩のNSは注目となりそうだ。
台湾市場は今日から春節が明けて取引を再開しているが、ウイルスの感染拡大を受けて中国市場は春節の期間を3日間延長し、今のところ取引再開は2月4日となっている。
今週の先物はここ数か月のレンジ下限23000円割れ目前で推移していることで、IVは週初には大盛りとなったものの、その後に先物が反発すると「ドッスン」と大剥げとなった。この辺りで下落も一旦は止まると考える向きが多いということではないだろうか。現にその後の先物は23400円程度までリバウンドした。
「ドッスン」した28日(火)の大引け(15:15)スマイルカーブ。9:00 の寄り付きからプット(ErisP)は大きく剥げていることが示されている。
#日経225先物 #オプション取引 #225op #スマイルカーブ pic.twitter.com/bH0YTCVsb2
— 上野原土下座ゑもん🐾ゑもんレポート/日経225先物オプション (@Emon201) January 28, 2020
「ドッスン」ってなに?「ドッスン」とは盛っていたIVが急に大きく剥げ散らかること。盛ったきたIVが剥げ基調に転換する切欠となることが多い。「ドッスン」はスマイルカーブから容易に観察ができるので絶対に見逃さないようにしよう。
「ドッスン」に関しては以下のレポートも参考にしていただければと思う。
しかしマーケットがこの水準で停滞してしまうことは考えづらい(方向性はわからない)。状況的にはベガを買って(オプション・ロング)いかなければならない局面ではあるもののが、そうは言ってもこのまま剥げ続けてしまえばオプション・ロングは負ける。先週も盛らないコールとセータによるタイムディケイに苦しみながら、何とか「プロテクティブ・コール」で取引をしのいだばかりだ。
オプション・ロングは高いトレードの精度と品質が求められる。一つタイミングを間違えるとその後に損失の山ができるのだ。
「プロテクティブ・プット」をエントリー
さて前置きが長くなってしまった。今週ここまでのマーケットの様子を観察してきたが、先物は値幅は上下に振れるが徐々に膠着感が出てくるのかもしれない。IVの「ドッスン」剥げも見たことだし少々怖い気もするが、一先ずここはマーケットの流れに乗りオプションを買っていこう。いずれ上下どちらかに動きが出るはずだ。
朝寄りから先物の下落が進み盛っていたIVではあるが、この時間にレンジ下限である23000円に接近してきたところでプットは前日比トントンまで剥げた。剥げたと言っても0.5%ほど、しかしその差は大きい(ベガ値から評価損益の計算方法を参照しよう)。この機会を逃さず「ErisP」(Eris1P_IV)のストライクを狙って「プロテクティブ・プット」をエントリー。いつものように最初のポジションは小さく取っていこう。
ErisP(Eris1P_IV)のストライクを狙うって?以下のレポートが参考になると思う。
これによるとATM付近はあまり盛っていないが、プット・コール共にOTMが最も盛っているのがわかる。プットはエントリーしたP195のストライク付近がドンピシャで最も盛っている。これは偶然でも何でもなく、意図して狙ったものだ。
以前のレポートにも書いたが、デルタに対するベガ値の増減は、ボンマという高次グリークスの値が影響している。ボラティリティのガンマ = ボンマ という訳だ。ボンマはスマイルカーブに重ねてプロットすると、M字をしている。ATM付近の値が最も小さく、プット・コール両サイドのOTMが最も大きい。そしてOTMでピーク値を付け、更にFOTMまで離れると再び小さくなる。
しかし小難しい話ではない。ボンマのピーク値はプットは-0.1程度、コール側は+0.15程度のデルタ値を持つストライク付近。わたしはこの位置(ストライク)のことをプット側を「ErisP」、コール側を「ErisC」と勝手に呼び、それぞれIVを15mチャートに記録して観察している。
これだけ覚えておけば盛り狙いでプットを買うときにどのストライクを選べば効率が良いかがわかる。と、ギルドの訓え。ただしボンマ値が大きいということは、剥げるときも最も剥げ散らかるということなのでご注意を。
Lv0033【プロテクティブ・プット/NSデイトレ】+136,000円≪そういう者たちは皆、大災害に見舞われることになる。彼らは事実や数値と言った単調な要因に……
なぜこの局面で「プロテクティブ・プット」なの?以前に連投したツイートが参考になると思う。
このプット剥げをチャンスと見るか否か pic.twitter.com/8Ha7gxRNyC
— 上野原土下座ゑもん🐾ゑもんレポート/日経225先物オプション (@Emon201) January 28, 2020
上記ツイート内のキーワード、「三対二の法則」とは?
つまり今回はアゲ良し・サゲ良し・ヨコヨコだめの「三対二の法則」がきっちりとワークすると考えられる。
「三対二の法則」とは「アゲ・サゲ・ヨコヨコ」の3つのシナリオのうち2つでWINが見込める条件が揃ったときにオプション特性とマッチしたスプレッドを仕掛けよ、という「ギルドの訓え」の一つだ。今が仕掛ける良いチャンスではないだろうか。
Lv0104【コール爆発!三連休明けSQ週のガンマ・トレード|リバース・コール・カレンダー・スプレッド】+210,000円今回のレポートはいつもの「ボラティリティ・トレード」ではなく、「ガンマ・トレード」となる……
IVは既に微妙に高水準(日経VIは18~19ポイント)。高水準のIVは盛るも剥げるも動きは軽快なので、ウイルス関連のヘッドラインにも気を配りつつ、この後のマーケット動向には十分に注視していこう。
2020.01.30(木)12:50 東京市場午後
後場、先物は下げ幅拡大。この時間-2%の-500円に迫っている。
剥げていたIVはプット・コール共にFOTMから盛り直す展開。これは画像に示したスマイルカーブ(前日対比)からも分かるように、ATMはあまり盛らずFOTMから盛ってきているということは、いわゆる「skewが上昇」(skewが立つ・skewがつく)ということ。
つまりプットの需要はATM付近より安いオプションであるFOTMの方があるという解釈で大方正しいだろう。このような「skewの変化」を利用したスプレッドには「バック・スプレッド」と「レシオ・スプレッド」が挙げられる。
今回のケースではATM売り・FOTM複数枚買いの「プット・バック・スプレッド」(コール・バック・スプレッド)が評価益となっていてWIN、逆符号(ATM買い・FOTM複数枚売り)の「プット・レシオ・スプレッド」(コール・レシオ・スプレッド)は損失LOSEとなっていることだろう。
なぜか?買ったものが上がれば利益になるし、売ったものが上がれば損失になるからだ。「ボラティリティ・トレード」と言えど至極単純な話。スマイルカーブを観察していれば分かることだが「skewの変化」にも目を配ると戦略の幅が広がるのではないだろうか。
さてホールド中の「プロテクティブ・プット」はさっそく利益が乗ってきた。もう後場「日銀ETF買い」があり少しはリバウンドするかもしれないが、もう少しホールドしてみよう。
次号につづく。