今回のレポートは「フルヘッジ・ベア・シンセティック」。「フルヘッジ・ベア・シンセティック」は頭脳明晰で容姿端麗、それでいて性格も良くクラスの人気者という、まさにぐぅの音も出ない超優等生。完璧すぎてほとんど非の打ち所のない(イラッとくるほど)スプレッドなので、オプション取引の上達を望むのなら絶対にマスターしておこう。
「フルヘッジ・ベア・シンセティック」は「カバード・コール + プロテクティブ・プット」で構成される。以下のコメントページで2105SQ最終売買日から2106MSQ最終売買日まで、20営業日にわたって毎日「フルヘッジ・ベア・シンセティック」の追跡コメントしている。最終評価額は+262,000円、優秀過ぎてこのスプレッドに惚れない理由がない。ぜひ参考にしていただければと思う。
それではオプション・トレードの現場の様子を詳しく見ていこう。
2021.07.09(金)14:45 フルヘッジ・ベア・シンセティック 東京市場午後
07SQ日の東京市場午後、07SQ値は「27726.72」で決まり、マーケットはまもなく大引けを迎える。昨晩NSに「プロテクティブ・プット」を返済した。明けて東京市場の前場は一時-750円超、しかし午後のこの時間になって-250円ほどまで急速に下げ幅を縮小する荒い展開。
(参考レポート:昨晩NSに「プロテクティブ・プット」を返済した)
やや出遅れてしまったが、スマイルカーブが全力で「下げのP剥げC盛り」となっているタイミングで、「フルヘッジ・ベア・シンセティック」をエントリーしていこう。そう、先物が大きく下落し、スマイルカーブのシーソーが「下げのP剥げC盛り」となっているときがエントリーのチャンスだ。デルタは微ロングに調整。ガンマとセータはほとんどニュートラル、ベガは微ショート。
もちろんスマイルカーブを観察していないと、このチャンスは掴めない。オプション取引は「スマイルカーブ命」、手っ取り早くスマイルカーブを確認したいのなら、YouTubeのゑもんレポートのチャンネルで垂れ流している🔴LIVE配信がお勧めだ。
(参考リンク:スマイルカーブ🔴LIVE配信)
わたしが「フルヘッジ・ベア・シンセティック」を組むとき大体はOTMプット(ErisP)を買い、OTMコール(ErisC)を売るのだが、今回はあまりにもキレイな「下げのP剥げC盛り」となっていることで、スマイルカーブのシーソー効果を最大限発揮したくプット・コール共にFOTMを使うことにした。力点と作用点は支点から離れるほどにテコの効果が高まるのと同じ理屈だ。画像のスマイルカーブ上に建玉がプロットされているので参考にしていただければと思う。
2021.07.12(月)14:55 東京市場クローズ
週が明けて月曜日、まもなく東京市場はクローズ。この時間の先物は+300円ほど。IVは「上げのP盛りC剥げ」型に全剥げとなり、スマイルカーブのシーソーは金曜の「下げのP剥げC盛り」から傾き方が逆転したことが画像からお分かりいただけると思う。
このスマイルカーブのシーソーの結果、ホールド中の「フルヘッジ・ベア・シンセティック」のプット買玉は微剥げに留まり、コール売玉は「ドッスン」と剥げ、ベガ益が評価益の中に内包された。もちろんデルタも微ロングに傾けて組成したので、デルタ益も内包されている。
「内包されている」と雑に書いたが、オプションをイジる上で評価損益の内訳は必ず理解できるようにしておこう。オプションに対する理解が乏しく、スプレッドのドコが損でドコが益となっているのか現状を把握できないということは、オプションで自分が何を狙って何をやっているのかまったく分かってないのと同義。
そうは言っても、グリークスの計算はスマイルキャッチャーなどのツールが勝手にやるので、自身でやることは誰にでもできるレベルの簡単な算数、難しいことではない。以下のレポート内で示しているように、まずはベガ損益の計算から慣れていこう。
この後も特に問題が起きなければ、引き続きスプレッドをホールドしていこう。
2021.07.13(火)15:00 東京市場クローズ
火曜日の東京市場がクローズ。ホールド3営業日目、先物は+150円ほど上昇したことで、スマイルカーブは今日も「上げのP盛りC剥げ」が継続。この極小ポジションでここまでの評価益となれば、もう十分だ。
注目はコール売玉。「フルヘッジ・ベア・シンセティック」の組成時から先物は+800円ほど上昇しているにもかかわらず、コール売玉は減価している。「上げのP盛りC剥げ」によりコールが剥げたからだ。そしてFOTMに離れるほどコールの剥げは強くなっており、同様にFOTMに離れるほどプットの盛りは強くなっている。狙い通りのスマイルカーブのシーソー効果(シーソーの変化)。「フルヘッジ・ベア・シンセティック」による「ボラティリティ・トレード」は大成功と言えるだろう。
それに何だか上値が重い印象。「フルヘッジ・ベア・シンセティック」は超優等生だが、弱点もある。それは先物が中途半端にズルズルと下落すること。つまりスマイルカーブが「下げのP剥げC盛り」を描くこと。「下げのP剥げC盛り」となったタイミングが「フルヘッジ・ベア・シンセティック」のエントリーポイントなのだから、さらに「下げのP剥げC盛り」を食らうとスプレッドは又裂きに合ってしまう。
そしてまさにそんなマーケットになりそうな雰囲気を感じる。だから放置せずにここで返済して、マーケットから一旦立ち去ってしまおう。
2021.07.13(火)15:10 全返済
全返済。次のタイミングを狙っていこう。
2108C31250 @-2枚 建値 9.00円 → 返済 7.00円 (+4,000円)
2109M @+1枚 建値 27885.00円 → 返済 28705.00円 (+82,000円)
2108P23000 @+1枚 建値 25.00円 → 返済 9.00円 (-16,000円)
今回確定損益 +70,000円
合計確定損益 +70,000円
(追記)ギルド集会所のトーク
(2021.10.15追記)
ギルド集会所で「フルヘッジ・ベア・シンセティック」について交わされたトークを追記しておこう。とても有益すぎる内容で参考になると思う。
TM2.0
諸先輩方、お忙しいところ失礼します。
ベアシン(フルヘッジ・ベア・シンセティック)についてご質問させてください。
Emonさんのブログを拝見していると、ベアシンのエントリータイミングは、
P剥C盛していて、シーソー効果が期待できそうな時だという印象を受けました。
(そもそも間違っていたら、すみません)
私は初心者ですので、三対二の法則を意識しているのですが、
このベアシンは三対二の法則に当てはめると
・「上げのP盛C剥げが起きたら、WIN」
・「下げのP剥C盛が起きたら、LOSE」
というのは、なんとなく理解できるのですが、
ヨコヨコの場合は、どうなることを期待しているのかがよくわかりません
(ヨコヨコでは、既に剥げているPはこれ以上剥げず、盛っているCは剥げることを期待して
WINという解釈でしょうか?)
そもそも、ベアシンを三対二の法則に当てはめて考えようとしていることが、
間違っているのでしょうか??(そんな単純じゃない??)
一概には言えないことが多いとは思いますが、
理解へのヒントになると助かるので、コメントいただけると非常に有り難いです。
ホリ 16:16
ヨコヨコがLOOSEだと思います
現時点まで下げのP剥げC盛りで来ていたところを「下げの全盛り」に切り替わるであろうタイミングがベストタイミングですので、このタイミングが「三対二の法則」だと理解しています
例えばレンジ下限とかですね、
「ここ抜けるとヤバいんじゃ・・・」を抜けると先日のプチパニック相場のようになって
一気にプットも爆発するので、この場合はベアシンのプロP側が爆発してくれます
下げ加速でガンマ効果も乗ってくれれば激ウマーですが、利確を逃すと一瞬でツルっつるになるのでそこが難しいところです・・・
ホリ 16:30
@TM2.0 さん
(古いから?かメッセージのリンクが取れなかったので…)
ベアシンのバイブルですw
TMさん仰るように、ジリ下げでP剥げC盛りが続くようならベアシンはきついですね(ここでゑもんさん言われてる③の状態)
④のタイミングでエントリーがベストですが、ヨコヨコでもカバC寄りの位置に先物がいてくれればかなり耐えられるのがベアシンの優秀さだと思います
>Emon
>わたしの場合の低IV相場の凌ぎ方は基本ベアシンで逝きます
>①下げのP剥げC盛りでデルタ・セータ微ロング、ガンマ・ベガ微ショートのベアシンをエントリー
>②その後に上げのP盛りC剥げでWIN離脱→①へエントリー待ちループ
>③その後に更に下げのP剥げC盛りでひたすらナンピン→②へ
>④その後に下げが強まり下げの全部大盛りしだしたらWINorトントン離脱かプロP変形かそのときの相場付きで再考
>⑤エントリー後にヨコヨコが続くならデルタ・セータ微ロング、ガンマ・ベガ微ショートを調整維持
Kaz 16:47
私もベアシン好きですが、おっしゃる通りよくリバウンドにならず下げ続けて結構やられます
でもC売り追加で調整して粘ってるうちにリバウンド局面がきて大抵何とかなりますね
下げまくってプロP爆発が一番美味しいですけど、その前に心が折れるかも
Kaz 16:53
あとベアシンのグリークスは非常にマイルドなので、ヨコヨコだとほとんど損益に変化がありません
(私の)経験上数日くらいプラマイほぼ0で推移したこともあります
その辺も優秀かと
op_ki 17:05
ベアシンは保険付きのカバードコールだと思っています。
デルタ消したベアシンはカバC部分が高ボラ時に結構やられるのでミニ切って合成先物に変えてしまうこともありますね。
TM2.0 17:22
@ホリ さん
毎度、めちゃわかりやすい解説ありがとうございます
バイブルもありがとうございます。正にほしかった情報でした。
自分で考えて取引しなきゃと思いつつも、型みたいなものがあると、試してみやすくて助かります
現時点まで下げのP剥げC盛りで来ていたところを「下げの全盛り」に切り替わるであろうタイミングがベストタイミングですので、このタイミングが「三対二の法則」だと理解しています
プロPもこのタイミングでエントリーするのだと認識しているのですが、プロPとの使い分けって、どのようにされていますでしょうか??
下げで、P剥げしているけどCがあまり盛っていないとき → プロP(C剥の期待が出来ないので、カバCはつかない)
下げで、P剥C盛していてるとき → ベアシン
みたいなイメージでしょうか??
ホリ 17:41
ですね、ご理解の通り基本的にはスマイルカーブに合わせてTMさん仰る通りのポジション取りがセオリーと思います
あえてプロPではなくベアシンにするような場合は皆さんも言われてる通り
「グリークスをマイルドにしたいから」ですかね、特に低ボラ相場では…
自分の場合ですが、一番はセータ(タイムディケイ)を消したいですね(「セータは無視」に反しますが…)、
プロPはOPの買玉しか保有しませんので先物がどの位置にいても時間経過は必ず不利に働きますので短期決戦になります
この辺りを自身の性格やトレードのクセみたいなものに合わせる感じでポジションを取っていくことになるかと思いますが、
私は比較的長めに玉を保有する方なので売り買い両方の玉を相場に合わせて出し入れするやり方を好んでおり
プロPよりもベアシンを組む傾向にあるなぁ、と振り返ってみて思います
TM2.0 17:57
@Kaz さん
コメントありがとうございます。
C売り追加で調整して粘ってるうちにリバウンド局面がきて大抵何とかなりますね
すいません、追加で1点ご教示ください。
C売りで調整とのことですが、C売りで「デルタ・セータ微ロング、ガンマ・ベガ微ショートを調整維持」をされているということでしょうか??
先物が下がってきたときに、更にC売りすると、P買いのデルタの-も大きくなっていると思うので、デルタがショートに傾くのでは??と思ったので、確認させてください
TM2.0 18:04
@ホリ さん
ありがとうございます! ベアシンの特徴やどういう意図で使うかが分かってきた気がします!
シミュしながら理解深めていこうと思います!
Kaz 18:07
私もベアシン好きですが、おっしゃる通りよくリバウンドにならず下げ続けて結構やられます
シミュ立てて観察してみるのも良いかと思いますが、コールのマイナスデルタの方が早く萎むことが多いので、スプレッド全体では大抵デルタプラスに傾きます
ぷっちょのマイナスデルタが増大して、全体がデルタマイナスになってるようならそもそもその時点でwinなのでルンルンですね
TM2.0 18:11
@Kaz さん
ありがとうございます! シミュしてみます
失礼しました
TM2.0 18:22
@op_ki さん
コメントありがとうございます。考えてみたのですが、意図されている点をどうしても理解できなかったので、追加でご質問させてください。
カバC部分はベガがマイナスなので、コールのIVが高騰すると、損失になるという風に理解したのですが、
ミニを切って合成先物にすることで、対処になる理由が理解できませんでした
ミニを切ると、
プット買い + コール売り = 合成先物売り
となると理解しているのですが、コール売り部分が残る限り、コールIVの高騰による損失の懸念は残るのではないでしょうか??
理解が悪くて申し訳ありませんが、またお時間ある時に返信いただけると助かります