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Ep0021【3.11東日本大震災の一週間/07話-愚者の罪と罰、週末持越しのプット・レシオ・スプレッドの行方】

 
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週間トレーダーズ・トリビューン
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金曜日に起きた東日本大震災から週末を経て、週明け月曜日の日経平均株価は、前日比633円94銭安の9620円49銭(-6.2%)

 

この下落率を、現在の水準に引き直してみましょう。

当時:日経平均10250円 → 約9620円【-630円/-6.2%
現在:日経平均21500円 → 約20170円【-1330円/-6.2%

 

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Ep0015【3.11東日本大震災の一週間/01話(目次)-わたしはこうしてオプション取引で吹き飛んだ】
表題の通りわたしは東日本大震災のあと、これから連載していくようなレポートを書いていました……

 

(前号のつづき)

 

Ep0020【3.11東日本大震災の一週間/06話-2011年3月14日(月)|恐怖と絶望で始まった週明け月曜日、日経平均株価-6.2%】
(目次へ戻る) (前号のつづき) 週末から週明け月曜日まで、コミュニティの面々から寄せら……

 

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・週明け14日、月曜日、朝、寄り付き前。

 

午前7時にオープンした日経平均CFDのプライスを確認すると、わたしは愕然としました。いえ、土日の間の被害状況を伝える報道から、こうなることは分かっていたはずです。下窓は大きく、200円ほど空け、100円を超す乱高下をしていました。

 

スプレッドシートに原資産価格を代入しオプション・ポジションの損益計算をすると、収支はトントン前後でした。あくまで、理論的には……。問題はボラティリティ、ベガがどの程度まで膨れるのか、ということでした。これは実際に寄り付きを迎えるまでは検討が付きません。

 

午前8時、オプションボードに日経平均先物オプションの気配値が並びました。わたしはその気配値を見て震えました。金曜日に2円で10枚売ったオプションが、なんと50円の売り気配だったのです。

 

マーケットで自分の鼓動が聞こえるほどに緊張をすることは滅多にありません。(落ち着け、落ち着け……)わたしは自らにそう言い聞かせながら震える手で電卓を叩き、損益を計算しました。

 

≪04P8500L@17円*1枚≫ (4月限プット8500を17円で1枚ロング)

→ (気配値550円-持ち値17円)×1000円×1枚 = 53万3千円の利益

 

≪04P7000S@2円*10枚≫ (4月限プット7000を2円で10枚ショート)

→ (気配値50円-持ち値2円)×1000円×10枚 = 48万円の損失

 

(記憶では)5万円程度のプラスでした。損益計算は上記のように簡単な計算ですが、恐らくわたしは思考停止状態だったのでしょう。暗算は無理でした。電卓のキーも幾度となく押し間違えて、再計算を繰り返していたのを覚えています。

 

スプレッドシート上の計算では、1枚の買いヘッジ玉のおかげで大きな損失となっていないと胸を撫で下ろすのも束の間、モニターに目を移すと寄り前気配の値はぶっ飛んだ値に更新され、そのまま損益計算をするとあり得ないほどぶっ飛んだ損失となりました。

 

鼓動は大きくマウスを握る手まで心拍が伝わってきます。鼓動に合わせて手首から先が揺れているのが分かるのです。その後も気配値は乱高下し、同時に損益も乱高下、もう生きた心地がしませんでした。

 

かろうじて第三者視点から己の力量を見ることができたのは幸いです。わたしは寄り付きからポジションの整理を始めることを決意しました。もはや損益の問題ではありませんでした。

 

明らかにわたしはオプション市場に恐怖を感じており、それは自分の対応能力を遥かに超えるマーケットに足を踏み入れてしまっている、ということを悟ったからです。

 

乱高下するCFDのプライスと気配値を追いながら「」 氏とスカイプを繋げ、シンガポール(SGX)日経平均先物が寄り付きを迎える午前8時45分まで地獄のような時間を過ごしました。

 

8時45分、SGXが寄り付きを迎えました。多少の乱高下はしていましたが、マーケットは比較的に落ち着いているような印象でした。だがそれは東京のマザーマーケットの寄り付きを待っているだけで、落ち着いているわけではありません。

 

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・寄り付き

 

9時、日経平均先物オプション市場が寄り付きました。

 

日経平均CFD、現物、そして先物のプライスは酷く乖離していました。3月末の権利落ち分を考慮しても鞘は数百円にも拡大、また時には逆ザヤとなり、どれが正しいプライスで、どのプライスを指標とすれば良いのかわかりませんでした。原油とゴールドは大きく下げていましたが、日経平均は一方的な下落ではなく、大きなリバウンドを伴う安値波乱の様相でした。

 

マーケットの動きから少し気持ちに余裕が出てきたのか、わたしはより有利なプライスでポジションを閉じようと、玉の処分を始めました。

 

≪04P8500L@17円*1枚≫ (4月限プット8500を17円で1枚ロング)

→ (利食い60円-持ち値17円)×1000円×1枚 = 4万3千円の利益

 

≪04P7000S@2円*10枚≫ (4月限プット7000を2円で10枚ショート)

→ (損切り9円-持ち値2円)×1000円×10枚 = 7万円の損失

 

前場が引けるまでに全てのポジションを返済しました。若干の損失を出しましたが、もはやそんなことは問題ではありませんでした。

 

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・原発が爆発したようだ

 

前場の引け後すぐだったと思います。「原発が爆発したようだ」とNHKが報じ、マーケットに激震が走ります。望遠カメラの映像では、確かに爆発し凄まじい衝撃波が宙に拡散していく様子が映し出されています。

※実際にはこのとき建屋が吹き飛んだだけで、炉が爆発したわけでなかった。

 

こういうときのNHKは他のどの民放よりも頼りになります。この報で日経平均は瞬時に150円ほど暴落し、9500円まで安値を更新していきました。

 

プット・オプションは目を疑うようなプライスで次々に出会っていきました。そしてついに売り板に並んでいた全注文が食われた(踏み上げられた)のです。ほんの一瞬の出来事、売り板が消滅したのです。信じられない光景でした。

 

15時、この日の日経平均は600円超安で引けました。わたしのポジションは既にスクエアでしたので、前引け後の大事には巻き込まれずに済みました。

 

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・イブニングセッションオープン

 

16時30分、東京は震度3・4クラスの余震に脅かされながら、夕場は続落して始まりました。福島第一原発の爆発事故が現実に起こり、マーケットはパニック状態に近かったと記憶しています。

 

18:00ごろ、マーケットが下げ止まったところで、わたしは再度プット・オプションの売り注文を入れました。1枚当たりの証拠金はやはり7000円で、注文は吸い込まれるようにすぐに執行されました。

 

≪04P5500S@1円*75枚≫ (4月限プット5500を1円で75枚ショート)

 

このポジションが致命傷となりました。

 

日中にはとんでもなくマズいポジションを命からがら整理を付けたばかりで、なぜこのタイミングで「」などしたのか。正直、自分でもわかりません。全く理解のできない行動です。今まさにマーケットの大変動の渦中にいることなどはすっかり忘れたのか、我も忘れて熱くなっていたのかもしれません。

 

一つ、このポジションから満期時に得られる利益は7万5千円、昼間に出した損失をこの相場で安易に取り戻しに行こうと考えたのは確かです。

 

ニューヨークタイムに入り、IVは更に吹き上がりました。NHKは相変わらず素晴らしい報道っぷりで、報道機関としての任務を休まずこなしていました。そのNHKによると、原発の状況はどんどん悪化していきます。リアルタイムに伝えられる政府機関や東京電力の会見からは、「異例の事態」、「想定外」というキーワードが目立ちました。

 

5円、10円、20円とあり得ないスピードでプットのアウト・オブ・ザ・マネーのオプション・プレミアムが跳ねあがっていく中で、「異例の事態」「想定外」というトレーダーであるなら決して許されない言葉を聞き、わたしは目が覚めました。

 

「ああそうか、これは『』だったんだ」

 

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・イブニングセッションクローズ

 

23時00分、あと30分で夕場はクローズを迎えます。この原発の状況ではとてもではないけれど、朝までにどうなるかわからないと思い、降参を決意しました。

 

わたしはクローズ間際に全玉損切りの注文を出しました。注文はすぐにマーケットに吸い込まれて行き、ポジションは再びスクエアになりました。そのとき1円で75枚を裸売りしていたプット5500は、25円でした。

 

≪04P5500S@1円*75枚≫ (4月限プット5500を1円で75枚ショート)
→ (損切り25円-持ち値1円)×1000円×75枚 = 180万円の損失

 

25円。現在のプライスから4000円も離れたファー・アウト・オブ・ザ・マネー、つい数時間前まで1円で取引されていたクズ中のクズオプションが、です。

 

こうしてわたしはこの日の夕場、とんでもなくマズい局面で「」をするという重大なミスを犯しました。そしてその結果、僅か数時間で口座を吹き飛ばすことになりました。まったくオプション取引というものは。

 

・犯した罪には相応の罰が下される

 

口座残高は大きくマイナスになっていましたので、このままでは明日の引けの値洗いで追証が来ます。わたしは(懲りないもので)すぐにマイナス分と、次の取引資金をクイック入金し、NHKを見ながら夜が明けるのを待ちました。

 

確かに大きな損失を出しましたが、不思議と打ち拉がれたような喪失感はありませんでした。それも全く。愚者の視点からでしたが、むしろオプション取引の可能性を目の当たりにしたことで、ひどく興奮していました

 

この「破産」が大きな転機となったのは間違いありません。「よし、一から勉強し直そう。そして必ずオプション取引をマスターしてやろう」、そのように考えていたと思います。

 

そして明日、2011年3月15日(火)。マーケット史に残るであろう「史上最悪の一日」が迫っていました。

 

追記:そのときモニターに貼った付箋紙は今も残してあります。

 

≪負けるトレーダーが勝てるトレーダーに変身する事は、ほとんどない。負けるトレーダーは彼自身を変えたいと思っていない。それは勝てるトレーダーがやる事だ。≫『エド・スィコータ』(マーケットの魔術師)

 

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(次号につづく)

 

Ep0022【3.11東日本大震災の一週間/08話-前代未聞!日経225先物サーキットブレーカー連続2回発動】
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Ep0015【3.11東日本大震災の一週間/01話(目次)-わたしはこうしてオプション取引で吹き飛んだ】
表題の通りわたしは東日本大震災のあと、これから連載していくようなレポートを書いていました……