「ゑもんレポート」へようこそ!こんにちは!オプショントレードのコミュニティ【ギルド集会所】、ご案内役の「みやび」です。
まずコメントや評価、チャンネル登録していただいた皆さま、ブログから【ギルド集会所】にご参加いただいた皆さま、誠にありがとうございます。
いただいた貴重なご意見は全て拝見しております。今後の参考にさせていただきますので、何かまたお気づきの点がございましたら遠慮なくよろしくお願いします。
1.みやびからのご案内
この動画シリーズはブログの「ゑもんレポート」を補完する内容でオプション取引を解説していきます。
今回は【知らないとヤバい教科書の罠】をざっくり解説。オプショントレーダーの間でよく話題になる「満期に関する 理論と実践の違い」を紹介していきます。
少し抽象的な表現も出てくるので分かりずらい部分もあるかもしれません。しかし教科書の知識をトレード用に上書きできる内容となっていますので、ぜひ最後までお付き合いください。
本編の前に、わたしから少しだけご案内です。
相場は自分がマーケットで取った行動に応じて、受け取る報酬と支払うべきペナルティが決められます。この報酬とペナルティは参加者が誰であってもテーブルに置いた額に応じて等しく作用します。
そこには初心者やベテランといった段位などは関係ありません。ですので「ゑもんレポート」や「ギルド集会所」から発信される内容も、初心者向け・ベテラン向けと区別していません。
成功したいという情熱や勤勉さを持った皆さまの助けになることを目指してお届けしていきますので、意味の分からない内容が出てきたときは、ご自身で調べ、学びながら少しづつ進むと良いでしょう。
それでは本編にいきましょう!
2.オプションの裸買い
オプション取引は金融工学の一部であり、非常にアカデミックな側面を持っています。それ故に教科書の内容は実際のトレード現場では全く役に立たないどころか、間違えている内容が多いのが現実です。
いえ、学術的・理論的には間違えているという訳ではないのですが、実践的なトレード・オペレーションでは使えない「机上の空論」になっていることが多いということです。
「机上の空論」をそのまま現実のオプショントレードに持ち込むことは危険です。理論は理論、現実は現実と、しっかりと分別を付ける必要があるでしょう。
ありがちな例を一つ挙げると、「マーケットが上昇すると思えばコールを買い、マーケットが下落すると思えばプットを買う」と言った「オプション裸買い」のオペレーションです。
教科書にはプット・コールそれぞれの裸買いを示した満期線のペイオフダイアグラムと共に書かれていると思います。こんなのです。このペイオフダイアグラムのポイントは「満期の話」というところです。
しかし現実はどうでしょうか。わたしたちは満期をトレードするわけではなく、「満期までにマーケットが辿る過程」をトレードします。
実際にはマーケットの上げ下げ予測を元にオプションを裸で売買しても、大抵のケースでは非効率です。
仮にその予測の方向性、つまりデルタの予測が正しかったとしても、「オプションの裸買い」では利益が出ないどころか損失で終わることすらあります。実際に経験がある方も多いのではないでしょうか。
方向性(デルタ)を正しく予測することすら困難な現実のマーケットで、正しくても利益が出るか分からない非効率なオプションをわざわざ使って、デルタにベットする必要などはどこにもありません。
「オプションの裸買いのメリットは損失限定」と教科書に書かれているのかもしれませんが、先物でも逆指値を使い損失を限定できますので、これはメリットというより単に心理的な問題でしょう。
オプショントレーダーはオプションの持つ効率的な特性と共に、非効率な特性も良く知っています。
よって一部の限られた局面を除いて、基本的にオプションを裸で売買することはありません。「オプションの裸買い」を宝くじに例えている教科書もありますが、もちろん宝くじ戦法で買うこともありません。
この場合デルタを取りに行くのであれば、もちろん先物を使うか、デルタを傾けた相応のスプレッドを組みます。
このようにオプションは学問上と実務上では視点が全く異なります。時間とおカネを無駄にしないためにも、「理論と実践の違い」を知っておいていただきたいと思います。
3.オプションの裸売り
実はオプショントレードはトレードなど行わずとも簡単に儲かります。前回・前々回でお話ししたような合成スプレッド、グリークス、IV、スマイルカーブ、こんな知識なども一切不要です。
その簡単に儲かる方法とは「オプションの裸売り」です。ただ単にオプションを売ってSQ(満期)まで放置し、あとは大変動が起きずに逃げ切れるよう、毎日お祈りするだけですから簡単です。
オプションはタイムディケイにより満期に向かってどんどん減価していきます。
そして売ったオプションがSQにイン(イン・ザ・マネー、ITM)しなければ受け取ったプレミアムは丸儲けとなります。インしても受け取りプレミアムの範囲内のSQ義務履行(支払い)であれば損はしません。
どの教科書にもペイオフダイアグラム付きで解説されており、先ほどの「オプションの裸買い」と同じく、確かに理論上はその通りであり、ウソ偽りはありません。
(ただし満期に限る)とカッコ書きがあるかは知りませんが、これは満期時点で売ったオプションがインするかしないか、ただそれだけの話です。ここでもポイントはやはり「満期の話」というところです。
ここから少し話が脱線しますが、実際に何回か吹き飛んだ経験を持つわたしから「オプションの裸売り」に関して【警告】です。
「まるで保険屋さんやカジノの胴元のように稼ぐ方法」と信じられないパワーワードを使い射幸心を煽っているつもりなのか、読者の大いなる誤解を助長させている罪な教科書も見られます。
マーケットの大変動などそうそうは起きませんから、まさに「オプションの裸売り」は悪魔のささやきです。実際にファーを裸売りすれば9割以上の勝率となるでしょう。
そしてこの方法で一度成功すれば、「オプションなんて超楽勝、知識も不要で寝ていれば誰にでも簡単に稼げる」と勘違いをさせてしまうほど魅了され、憑りつかれてしまいます。
憑りつかれた後は、多少怖い目や痛い目にあった程度ではそう簡単に抜け出せません。既にオプション売り主体のトレード方法しか考えられない「オプション売り脳」になっていることでしょう。
一度「オプション売り脳」になってしまうとセータしか見えませんし、満期のことしか考えられません。
怖い思い、痛い思いをした後なので「裸売りでは何だから」と一ひねり工夫したとしても、せいぜい枚数を減らすか、セータ視点でショート系スプレッドを適当に考察する程度です。
症状の末期には「Weeklyオプションなど満期が近いオプションならセータが強いので安全」とトンチンカンなことを考え出します。
残存が少なければ本当に安全でしょうか。安いオプションを売ることになる上に、セータと同時にガンマも強くなっていくので、吹き飛ぶときはより派手に吹き飛ぶのではないでしょうか。
満足のいくプレミアムを得たいばかりに枚数を増やせば、「吹き飛ぶ」というより「蒸発」するかもしれません。
またオプション・マーケットは、保険屋さんやカジノのある世界とは存在している次元が異なるので、「胴元のように稼ぐ」などとは全く言えません。
必読書の一つ、ナシーム・ニコラス・タレブ著「ブラック・スワン」を読めばその次元の違いとは何か、そしてなぜわたしたちオプショントレーダーが「オプションの裸売り」をやらないのか良く理解できると思います。説明欄に「必読書一覧」のリンクを貼っておきます。オプションを触るなら絶対に読んでください。
まれにプットとコールの両方を裸売りしデルタ・ニュートラルにした「ショート・ストラドル、ショート・ストラングル」を組むことはあります。しかしそれも仕掛けても良いごく一部の局面だけに限定されます。
言い過ぎなくらい言ってしまいましたが、まだ足りないくらいです。【オプション取引で吹き飛ぶ人は、セータしか見ていませんし、満期しか考えていません】、これはこの動画を観た方への警告です。
「今回の相場で吹き飛んだ」という騒動は、何度でも定期的に繰り返されます。もはや前シーズンから新シーズンへの幕間みたいなもので、オプション・マーケットでは珍しくもありません。
それだけ自身が「オプション・マーケットで何をやっているのかが全く分かっていない」参加者が大勢いると言うです。
これを「参加者の淘汰」とか「新陳代謝」とか残酷に言うこともありますが、多くの場合は教科書を読んで「理論と実践の違い」を勘違いをしたままトレードを実行していることが原因ではないでしょうか。
わたしはかつて「現実のオプション・マーケットで自分が何をやっているのか全く分かっていなかった」参加者の一人であり、大きな変動が訪れる度にオプション売り主体のトレードで淘汰されてきた身です。
「ゑもんレポート」に掲載しているわたしが吹き飛んだエピソードの一つ、【3.11東日本大震災の一週間-わたしはこうしてオプション取引で吹き飛んだ】シリーズは大変お恥ずかしながら全て実話です。
訳も分からずオプションをイジっていた、いえ教科書を読み、理論を知っただけで分かったつもりになっていた頃の話で、当時の状況を詳細に綴っています。
この話を皆さまにぜひ読んでいただき、今後のトレードの反面教師としてお役立ていただければと思います。ベテランの方は軽く笑い飛ばしてやってください。
少し熱くなってしまい、話が脱線していますので、次に行きます。
4.満期線、デビット、クレジット
ここでわたしがこの世で最も嫌いなものをご紹介します。それは「満期線」のペイオフダイアグラムです。先ほどからチラチラ出てきて、オプション取引の教科書にも必ず出てくるこんなヤツです。
左側が「プット裸買い」、右側は「コール裸売り」の満期線のペイオフダイアグラムです。ペイオフダイアグラムはX軸に原資産価格、Y軸に損益額を示し、それぞれの関係を視覚的に描いたグラフです。
満期線のペイオフダイアグラムと共に付いている説明は、「満期にインしなかった場合の損益はいくら、インした場合の損益はいくら」となっています。
満期線のペイオフダイアグラムにウソ偽りはありません。満期にピタリと一致した損益が得られるでしょう。
2番目に嫌いなものは「デビット」「クレジット」という言葉です。
合成スプレッドを組んだ際にオプションプレミアムが差し引き支払いになるものをデビット、受け取りになるものをクレジットと言います。
そしてオプションプレミアムの受け取りだ支払いだという内容、これも「満期の話」です。次に行きます。
5.満期持ち込み
先ほどの説明に出てきました「プット裸買い」と「コール裸売り」の満期線、現在の本当の姿はこうです。
如何なるスプレッドの満期線を見ても、それは現時点ではただの幻想に過ぎません。デビット、クレジットもそうです。満期時点の話は実際のトレードでは全く役に立たずゴミ同然と言えるでしょう。
いくら理論上は正しいと言っても、現実のオプショントレードの世界ではまさに「ザ・机上の空論」です。このゴミはわたしたちにとって有害となり得るかもしれません。
なぜなら、わたしたちがポジションを取った瞬間からマーケットは好き勝手に動き回るのが現実であり、満期時点よりも「満期までマーケットが辿る過程」の方がよっぽど重要だからです。
オプショントレードの場合、オプション価格に影響を与える要因は多岐にわたっており、「満期までにマーケットが辿る過程」とは原資産の推移、デルタだけでは済まされません。
原資産の変化の規模・速度・時間、センチメントや重要イベントの有無などはIVに影響を与えベガに作用します。時間の経過はセータの味方をしますが、無視されガンマと反目することもあります。
こういった「満期までにマーケットが辿る過程」を無視し、満期にインする・しないという話だけでオプションの説明を片づければ、非常にわかりやすく簡単になるかもしれません。
しかし読者にこのような「最終的に満期にインしなければ問題ない、逃げ切れれば問題ない」と誤解させてしまう説明には大いに疑問を持ちます。
6.満期よりも過程が重要
満期しか見ていないということは、デルタとセータしか見ていないと言えるでしょう。
#01の動画「4つの必須グリークス」の項目で「死にたくなければ絶対に無視しないで下さい」とお話しした「デルタ」「ガンマ」「ベガ」のうち、「ガンマ」と「ベガ」を無視しています。
オプション取引は「ボラティリティのトレード」です。
オプションの最も実践的な手法の一つである「ボラティリティ・トレード」は、「満期までにマーケットが辿る過程」をトレードするので、基本的にポジションを満期に持ち込みません。
ですので教科書で覚えろと言われている様々なスプレッドの満期線の形状や、そのスプレッドがデビットであるかクレジットであるかなど気にする必要はなく、知らなくても問題ありません。
現時点では日本語で書かれた実践的なオプショントレードの教科書はほとんど見られません。まして実践的な「ボラティリティ・トレード」の核心に迫ったものなどは皆無です。
わたしたちは最初のうちから「満期の話」でオプションの説明を受け、満期に持ち込むことを前提としたオプショントレードを擦り込まれており、言ってみれば「満期脳」になっています。
でも今日から「満期脳」をトレード用に上書きしていきましょう。満期インを狙った「オプションの裸買い」は基本やりませんし、満期アウトを狙った「オプションの裸売り」などは絶対にNGです。
売玉が捕まってしまったときでも、「満期持ち込みで逃げ切れれば大丈夫だから」などと考え、それを損切りの予定を変更する理由にしないことです。
満期線やデビット、クレジットなど「満期の話」は机上に置いといて、実践では「満期までにマーケットが辿る過程」の方が遥かに重要、と知識をアップデートしていきましょう。
やっぱりオプションは「簡単には稼がせてくれない」のです。今回の内容、【知らないとヤバい教科書の罠】をまとめます。
わたしたちは満期をトレードするわけではなく、「満期までにマーケットが辿る過程」をトレードします。満期時点での話は理論として脇に置き、現実のマーケットを見て実践的なトレード方法を考えましょう。
理論的にナビ通りに向かえば目的地には着くかもしれないものの、現実の道中では何が起きるか誰にも分からないので、通る道はよくよく選んでください。
そもそもナビの目的地設定に疑いはありませんか?ということです。
それでは今回はここまでとなります!またお会いしましょう!