オプション取引に於いて、現在のオプション理論価格(オプション・プレミアム)を知らなければ、それは武器を持たずに戦場に出るのと同じように、即座に市場のカモにされます。
オプション理論価格は証券各社が提供しているシミュレーションソフトでも知ることができます。しかしその値は各社バラバラで一致しませんので、どれが正しいオプション理論価格(もしくはその近似)の値なのかがわかりません。(その誤差は証券各社でかなり違います)
そこでオプション・トレーダーは自ら算出したオプション理論価格を基準として、実際の取引に臨みます。やはり自分で計算したものが一番信頼して使えるからです。
今回のレポートではエクセルでオプション理論価格を算出する公式、「ブラック・ショールズ方程式」を超簡単に書きます。ぜひ「スマイルキャッチャー」に実装していただき、実際の(板上の)プレミアムとの差異を比較してみるとオプションの理解が深まります。またこれからオプション取引を考えている方もぜひ試してみてください。
「スマイルキャッチャー」のダウンロードは以下のリンクからどうぞ。
・オプション価格は面積の値だった
オプション理論価格を算出する公式は、一般的に「ブラック・ショールズ方程式」を使用します。ブラック・ショールズ方程式は偏微分方程式で、確率分布曲線とオプション損益曲線の間の面積を求めています。
しかし「運用から利益を上げることが目的」であるオプション・トレーダーは最終的なオプション理論価格が分かれば良いことなので、必ずしもブラック・ショールズ方程式の内容や詳細を理解している必要はありません。
ブラック・ショールズ方程式自体は非常にシンプルな公式ですので、エクセルに保存しておき、あとは6つの変数を必要に応じて変化させるだけで十分です。
それでは順を追ってオプション理論価格(オプション・プレミアム)を算出してみましょう。
・必要な6つの値
まず算出したい株価や為替レートを参考に以下の6つの値を準備します。
- ①: 株価(為替レート)
- ②: 権利行使価格
- ③: 満期までの残年数
- ④: 満期までの金利(%で表す)
- ⑤: ボラティリティ(一年間の株価変動の標準偏差を%で表す)
- ⑥: 配当利回り(一株当たりの年間配当金額÷株価を%で表す)
次に上記の値を以下の2つの公式に代入し値を求めます。
- ⑦: (LN(①/②)+(④-⑥)*③)/(⑤*SQRT(③))+⑤*SQRT(③)/2
- ⑧: (⑦-⑤*SQRT(③))
※LN関数=自然対数
※SQRT関数=平方根(ルート)
・ブラック・ショールズ方程式
最後にここまでの値を以下のブラック・ショールズ方程式に代入します。コール・オプションとプット・オプションでは一部の符号が逆になります。
コール・オプション理論価格 =
(①*EXP((④-⑥)*③)*NORMSDIST(⑦)-②*NORMSDIST(⑧))*EXP(-④*③)
プット・オプション理論価格 =
(-①*EXP((④-⑥)*③)*NORMSDIST(-⑦)+②*NORMSDIST(-⑧))*EXP(-④*③)
※EXP関数=eを低とする数値のべき乗
※NORMSDIST関数=指定した平均と標準偏差に対する正規分布関数の値
以上の関数で株式現物オプション、指数オプション、商品先物オプション、通貨オプション、債券オプションなど様々な銘柄のオプション理論価格を算出することができます。
・ブラック・ショールズ・モデルの欠点
ただし通貨オプションに関しては、ブラック・ショールズ方程式を改良したモデルが使われることもあります。これは通貨取引の場合、通貨と通貨の交換であることからそれぞれ2つの金利を考慮する必要があるからです。
またブラック・ショールズ・モデルには長期オプションや複雑な合成オプションでは誤差が広がり正確な理論価格が得られないという欠点もあります。
しかし通常の取引の範囲内(満期まで残100日程度まで)で行う日経平均オプションや通貨オプションでは、上記のブラック・ショールズ方程式で十分です。そこまで厳密にオプション理論価格の正確さにこだわる必要はありません。
オプション取引「4つの必須グリークス」
オプション取引の「4つの必須グリークス」である「デルタ」、「ガンマ」、「セータ」、「ベガ」といったオプション・リスク指標は、ブラック・ショールズ方程式を「偏微分」した「変化率」で表されます。
ご興味のある方は以下の関連レポートも合わせてご覧いただければと思います。
変化率とは
デルタとは
ガンマとは
セータとは
ベガとは