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会社を辞めて専業トレーダーを目指そうとする者は多い。数百万円の貯金を元手にこれからトレードで金を増やし、そして誰にも縛られず悠々自適な生活を送ろうというわけだ。
仕事を辞めて専業トレーダーになりたい
できることなら金持ちになりたいし、誰からの束縛も受けたくない。こういった夢を叶えるであろう専業トレーダー計画は、相場でオイシイ思いをしたことがある者にとっては確かに魅力的に見えるし、また現実的でもある。負けてばかりの素人とは違い「オレにならできる」というわけだ。
しかし相場を経験したことがない者、あるいは相場で多くの苦労を経験した者にとっては、このような計画は限りなく非現実的な妄想に写るだろう。そんなに簡単な話なら世の中の誰一人として苦労などはしないはずだ、と言うに違いない。
あなたの客観性はどう判断するだろう。勤めを退職しトレードで生計を立てるという計画は可能であり現実的だろうか、それとも不可能であり非現実的だろうか。
相場歴が短ければ、オイシイ思いばかりしか経験していないことも多い。だから相場歴が短い者ほど、相場に多くの夢を見がちである。相場では当然に大多数が負け組となるが、自分だけは特別にその確率の外にいると考えている。そして相場の値動きが全てであり、自分は動きが読めるという主張に明確な根拠はない。
対してベテランは、自分は例外ではなく大衆の中の一人に過ぎないことを知っている。相場で儲けることよりもまず生き残ることを第一に考え、そのために論理的優位性や資金管理、相場哲学という重要な概念を備え持っている。
相場歴とは、単に時間的な長さのことではない。相場は単調よりも激動の方が学ぶことが多いものだ。だらだらとした何もない相場を何年も経験するより、円キャリー相場が崩壊するまでの1年間や、一連の第二次世界恐慌の1年間を経験する方が、遥かに大きな経験となる。
だから相場歴を長い・短いと長さで表現するのは、ある意味危険だということもベテランは知っている。
例えば仮に相場歴が長いあなたに、相場歴がまだ浅い我が子が「仕事を辞めて専業トレーダーになりたい」と言い出したら、あなたは何と答えるだろうか。相場歴が浅い夫や妻が「仕事を辞めて専業トレーダーになる」と言い出したら、あなたは何と答えるだろうか。
本人の相場経験が浅いのであれば、わたしだったらこう言うかもしれない。「無理だ、やめておけ」と。
あなたは決して相場の初心者ではない
しかし経験豊かな者が初心者に「相場には手を出すな」と説いたところで、また周囲がどんなに冷やかな反応を示したところで、本人の夢が不純なものでなければ、その初心者は自発的には相場を止めないだろう。
またギャンブルをやりたいわけではないのなら、彼は相場の自然淘汰からも逃れられるに違いない。勤勉な初心者は、やがて多くの失敗を経験し、多くの良き友人と巡り合い、そして切磋琢磨していくうちにいつの間にか初心者ではなくなっていくのだ。個人のトレーダーはこうして育っていく。あなたのように。
かつてのあなたはその勤勉な初心者の一人だった。でなければ、このレポートを読んでいるはずがない。今は初心者ではないが、しかしまだ相場で何かの自信がないのか、何かの確信を持てないのか、或いは自分に足りない何かを探し求めているのかもしれない。いや、きっとそうだ。そうでなければ、あなたはあなた自身の貴重な時間をこの「ゑもんレポート」に費やしているはずがない。
あなたは決して初心者ではない。相場では初めてポジションを取ったその瞬間から、その者は初心者ではなくなる。なぜなら本人が何と甘えようと、相場は初心者に決して免罪符を与えないのだから。
ベテランも同じだ。あなたは決してベテランではない。本人が知識と経験の深さを言い張ったところで、相場はベテランにも免罪符を与えない。相場では誰の甘えも奢りも許されていないのだ。
我々は初心者でもなく、またベテランでもない。少しも特別な存在ではないのだ。だからといって相場の世界を当てもなく彷徨っていてはいけない。あなたは到達するべき目標を持っているだろうか。
もし目標がないのなら、次のわたしの提案を考えてみてはどうだろうか。
まずあなたの第一の目標は、この「ゑもんレポート」を卒業することである。それは自分のハートとスキルに十分な確信が持て、「時間の無駄だ。もはやゑもんレポートから得るものは何もない」と悟ったときである。
そしてこの「ゑもんレポート」の目標と存在意義も同じところにある。誰からも必要とされなくなったそのとき、「ゑもんレポート」の全ての目標を達成したということだ。
彼のユーモアに決して騙されてはいけない
この大義のために、わたしはインタビューを書かせて欲しいと、ある専業トレーダーに声を掛けた。彼は「KEN」という名でコミュニティに登録している。彼とわたしはトレーダーとして知り合って3年ほどになる。今では毎日のように会話を交わす最も近しい友人の一人だ。
彼はコミュニティの自己紹介では「専業トレーダー」ではなく、「兼業トレーダー」として参加していたはずだ。しかし私は彼と個人的な付き合いを重ねていくうちに、彼は本当は「専業トレーダー」であることを知った。正直、初めは驚いた。
彼が専業トレーダーであることを公に沈黙していたのには、正当な理由がある。彼は自分はまだ相場に未熟だと考えており、トレードで生計を立てることに確信が持てなかった。そして自分がしたことは無謀な挑戦だったのではないか、とも考えていた。そう、彼は会社を辞めて専業トレーダーの道を選んだ。
それに専業トレーダーとして周囲から余計な注目を受けることにより、その目を気にしたくはなかったし、他人の意見に右往左往して己がブレてしまうことを恐れていたのだ。
彼は専業トレーダーとして3年間生き残った。節目を迎えたこともあり、有難いことに彼は今回のインタビューの依頼に快く応えてくれた。またインタビューが記録として残ることによって、彼は自分の存在と立場を自ら認める切欠にもなるだろう。これは彼の更なる自信と前進に貢献することになるとわたしは確信している。
日々、コミュニティで交わされる彼のユーモアあふれるジョークに決して騙されてはいけない。彼も登場する「3.11東日本大震災の一週間」の投稿コメントからも分かるように、彼が発する言葉の裏には専業トレーダーの知恵が大いに隠されていることをわたしたちは見破らなければならない。
前置きが長くなってしまった。では早速、彼のインタビューを綴っていこう。
(次号につづく)
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