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■しかし今はそのシステムを運用していませんね。なぜです?
□実運用に入る前の最終段階になって、注文や注文のキャンセル、トレイルなどの注文訂正など自動売買の指示系統が問題なく機能するかをテストするために、僕はまずデモ口座で実験を行いました。
そして何も問題なく、自動売買は機能しました。自分でも素晴らしい自動売買システムを作ったと満足していました。そうしていよいよリアル口座での運用をスタートさせたのです。
・運用をスタートした途端にガラクタ化
■しかし?
□ええ……結果はあなたが考えている通りです。自動売買による注文は滞りなく機能しました。しかし注文がマーケットに流れれば流れるほど、高勝率であったはずのシステムはなぜか予想外の連敗を続けました。そしてリアル口座はあっという間に破産に追い込まれました。
■ポジションサイジングが問題だったのでは?
□いえ、固定比率サイジングでしたのでポジションサイジングの問題はありません。確かにバックテスト上は最高のパフォーマンスを叩き出していたのです。しかし実運用を始めた途端にあっという間に破産することになるなんて信じられませんでした。
「今までの相場でしか通用しないシステムだった」としか説明が付けられません。僕はこの結果に酷く落胆しました。これまでのシステムよりも期待感が大きく、全身全霊を込めて作ったシステムの結果がコレでしたから。
■バックテスト上では最高に見えたシステムも、運用をスタートした途端にガラクタ化するなんて、システムトレーダーをやっていればよくあることでしょう?
□そうです。よくあることです。僕はこれまでにも同様のことを幾度となく味わってきました。それでも諦めずにシステムを作り続けました。僕は「マーケットに聖杯などはない」と知っていながら、システムトレードにその答えを求めてしまっていたのでしょう。
・「聖杯」システムは存在しないし作ることもできない
■相場の経験者ならば「マーケットに聖杯などはない」と誰もが理解しています。しかしそうは言いながらも単一の売買シグナルを発する古典的運用システムは、そういった「聖杯」を求める典型例ではないでしょうか。
□僕はついにこのシステムに打ちひしがれました。最悪の結果に強い衝撃を受け、システムを作る意欲を完全に喪失したのです。
■未来永劫、機能し続ける売買システムは存在しない?
□既に結論の出ていたことではありましたが、その一件で改めて再認識に至りました。そのような夢の「聖杯」システムは存在しませんし、作ることもできないのです。絶対に。
■本当にそうですか?これまで私たちが学んできた多くの著書・著者の意見を否定することにもなりますよ。中には模範的と評される良書も含まれるでしょう?
□遺伝的アルゴリズムを実装した売買システムでもない限り、絶え間なく変化を続けるこのマーケットで、カウンター手法を使ったシステムはもちろん、例え堅牢だと言われるトレンドフォロー手法であっても、永久に機能するというのは全くの幻想です。
数年間は機能するシステムは作れるでしょうが、マーケットで玉を持つに値するパフォーマンスは出ないでしょう。「いつまでも儲け続けることができる画一的な手法」などは絶対に存在しません。
■はっきりとそう言えますか?
□ええ、僕は誤っていました。これは僕が今まで多くの失敗から学んで言える唯一確かなことです。
■そこまで強く確信を得ていたとは驚きました。
□少なくとも僕にとってのシステムトレードとは、全て幻想を追いかけていただけでした。だから今までのやり方は全て捨て去る「決意」をしました。もう「砂場のお遊び」は終わりです。
・システムトレードはトレーダーに多大な経験値を与えてくれる
■今まで追求してきたシステムトレードを捨て去るのはさぞ悔しいことでしょう。
□数年間を費やして全力で努めてきたシステムトレードで満足のいく結果が出なかったのは、それはもう言葉では言い表すことができないないほど悔しいです。ですが「今のトレード」を実践するのに十分過ぎるほどの経験値を得たと思っています。
随分な遠回りでしたが、システムトレードをやってきたことを後悔していません。それで僕はきっとステップアップできたのですから、むしろ感謝しています。
■あなたのトレードの手段や方法はこれからも変化し、進化を続けると思います。しかしあなたの目標は何ら変わっていません。もちろん失敗は糧として活かせるのではないでしょうか。
□確かにシステムトレードはトレーダーに多大な経験値を与えてくれるのは間違いありません。裁量トレードからでは決して得ることができない多くの学びがありました。
今考えれば、それらは「今のトレード」を行うのにも欠かせない経験ばかりだと思うのです。あらゆるテクニカル分析、ポジションサイジング法、相場力学、投資行動心理学、自己規律やギャンブル理論を学び、売買ロジックをアルゴリズム化しプログラミング、稼働させれば山のようなバグの修正。
システムトレードを経て一つ何かの結論を見出すことは、我々のような個人トレーダーにとって登竜門なのではないかと思うこともありますよ。
■さて、わたしはあなたの行っている「今のトレード」が非常に好調であることを知っています。それではいよいよ今回のインタビューの核心に迫らせてください。
□ええ、お願いします。
■現在あなたはどの市場に参加していますか?
□日経225先物オプション市場です。
(次号につづく)
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