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Ep0031【奇妙な保険(後編)―CDS、クレジット・デフォルト・スワップ】

 
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(前号の続きです)

 

Ep0030【奇妙な保険(中編)―高値で買い戻すハメに】
(前号の続きです) あるとき、あなたはゑもんさんの異変に気が付きます。そういえば最近、とっかえひっかえ乗り回していた高級外車を見掛けなくなくなり、本人も会社に出勤している……

 

」は、わかりましたと言い、話し始めました。

 

バナナ投資銀行の心配事は不良債権が出ることです。銀行は色々な人にお金を貸し付けているので貸し付けのバランスシートをできるだけ軽くしたいと考えています。そこでゑもんさんが債務不履行となった場合に対し、あなたに保険料を支払うことで保険を買い、債権の不良化をプロテクションしたのです。同時にあなたはこの保険の売り手となり、ゑもんさんの信用リスクを背負いました。

 

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・からくり

 

そしてゑもんさんのデフォルトが現実に一歩近づいた今、あなたはゑもんさんの債務を背負わされるのでないかと不安になり、この賭けからフォールド(降りる)しました。今度はあなたが保険の買い手となる番です。こうしてこの保険は満期を迎えるまで人から人へと渡り歩きます

 

保険の買い手となったあなたはバナナ投資銀行から毎年100万円の保険料を受け取り、同時にわたしには毎年400万円の保険料を支払います。あなたは差引マイナス300万円ですが、デフォルトに対して完全にプロテクションしたとこになります。このプロテクションは再保険、すわなちあなたがあなた自身のデフォルトに対して保険を掛けることと同意なのです。

 

そしてわたしはあなたから毎年400万円を受け取る代わりに、万が一にもゑもんさんがデフォルトした場合、あなたに代わって債務を肩代わりします。

 

・アービトラージ

 

お互い良い話でしょう、これこそ「Win・Win」の関係ではないでしょうか、とどこかで聞いたことあるフレーズを思い出しながら、あなたは「」に更に質問します。ゑもんのヤロウの債務を引き受けるリスクなんて背負って大丈夫なのか、と。彼は続けます。

 

心配はご無用です。われわれは十分な量の保険を他に買(ロング)ってプロテクションしています。ゑもんさんが債務不履行となっても、十分に利益が出ますし、逆に債務不履行しなくても、あなたから毎年支払われる400万円の保険料から他にプロテクションしている保険の保険料を支払うので、損は出ません。どういうことか理解できますか?

 

先のバナナ投資銀行も同じです。ゑもんさんからは当然ながら担保を取っていますし、更にあなたからも「最も安価に」保険を買っています。つまりバナナ投資銀行は債務不履行に対して完全にプロテクションしています。われわれオレンジファンドも同じく、「片張り」ではありません。

 

つまりこの取引は裁定(アービトラージ)でリスクと取引コストを相殺(ニュートラル)し、皆で「ババ抜き」をするゲームなのです。裁定の組み方次第でどっちに転んでもヨシという状況を作り出せるのが、この仕組みのオイシイところですね。

 

恐ろしくもこの保険を「片張り」で売(ショート)っていた勇者はあなただけですよ、と言われ、小鳥のように開いた口が塞がらないあなたを横目に、彼は更に続けます。

 

・裸売り

 

オプション取引って知っていますか?聞いたことはあっても詳しくは知りませんか。保険はオプション取引と似ています。あなたはオプションの裸売りをしていたのですよ。対してバナナ投資銀行とわれわれオレンジファンドはオプションを買い、ゑもんさんの破綻に賭けていたのです。もちろん破綻しなくても利益が出るように、差し引きプラスのコストでね。クレジット・スプレッドということですね。

 

このゲーム、最高です。金融工学によって容易に信用リスクの移転ができるようになったのですから、それはもう、たまりません。なんたって、他人のカネで賭けができるのですから。負けても自分の懐は痛まないし、勝ったカネはわたしが全取りです。良い時代になりましたね。

 

今や原資産が何であってもこうやって取引することができるのです。彼はニヤリ、としました。ニコリ、ではありません。ニヤリ、です。

 

ゑもんさんがバナナ投資銀行に対して負っている債務(信用・クレジット)の破綻(不履行・デフォルト)に対して賭ける保険料(プレミアム)の取引(交換・スワップ)。

 

クレジット・デフォルト・スワップ――CDS

 

90年代後半、金融工学が生み出したこの奇妙なデリバティブ取引、CDS市場が誕生したころはこんな話があったかもしれません。

 

・「まさか」はいつか本当に起きる

 

ああそうだ投資にご興味あるようなので一つ忠告を、と「」は帰り際に玄関先で言います。

 

今回はゑもんさんのデフォルトを事前に察知できましたから、あなたは少しだけ痛い目にあったかもしれませんが、既の所で大事に至らずに済みました。しかしもしこれが、突然の夜逃げで突然のデフォルトとなっていたらどうするつもりだったのですか?

 

一発で破滅するような賭けをするのは、どんなに勝率が高そうに見えても愚か者のやることですよ。そうは思いませんか?そういう愚かな人はプロの中にもいっぱいいます。そういう人は今回ウマくいったら、味をしめて次回も同じことをします。いつか撃たれるそのときまで、愚かな賭けを繰り返します。だからもう破滅は時間の問題で、最後に生き残ることはありません。

 

愚かな賭けはいつかどうせ破滅するのですから、最初からやらないことです。金融工学を熟知していれば問題ない、という人もいますが、とんでもない。まるでジョークです。

 

そうです、「まさか」はいつか本当に起きるのです。45億年に1度?バナナ投資銀行さんのそれ、販促用資料、信じていたのですか?ハハハ、ご冗談を。金融工学で作られたモデルの世界と、現実の世界は大いに違います。この金融工学というもので評価されたリスクは、ウソやまやかしが多いものですからご注意を。(おわり)

 

(前編に戻る)

 

Ep0029【奇妙な保険(前編)ーゑもん家の豪邸と債務】
ヘビー級のEp(エピソード)が続きましたので、今回はライトに書きました。気軽に読み進めていただければ幸いです。前編・中編・後編と3回の連載となります。 あ……