(前号の続きです)
あるとき、あなたはゑもんさんの異変に気が付きます。そういえば最近、とっかえひっかえ乗り回していた高級外車を見掛けなくなくなり、本人も会社に出勤している様子がありません。
んんんー?ま・さ・か――
・45億年の1度の確率
イヤな予感がよぎると同時に、とてつもない不安に襲われました。あなたはそのまま城壁をよじ登るとゑもんさんの豪邸に飛び込み、彼をとっ捕まえて事情を問いただします。すると彼は肩をすくめながら、事業に失敗したことを告白しました。
会社は倒産保険できちんと清算し、バナナ投資銀行の債務返済は私財を取り崩しながら継続、今のところは滞っていない。しかし当面は収入がないので将来はどうなるか……と言います。
やっぱりだ!今のところは大丈夫だが、今後は分からないだと!あやふやなことを抜かしやがって!これでは破綻したも同然、何が45億年の1度の確率だ!トリプルAクラスの保険が、一気にジャンク級になりやがった!まさかゑもんのヤロウが作った借金1億円を、わたしが背負うことになるとでもいうのか!こんな時限爆弾みたいな保険は、毎月100万円の保険料を貰ったって安すぎる!濡れ手で粟、なんて言ったのはバカヤローは一体どこのどいつだ!
・救世主現る
わたしはなんと愚かなことをしたのだ、ゑもんのヤロウの返済が滞るのはいつか、いやその前にヤツの夜逃げは今晩決行されるのではないか……。そうだ!「いつでも自由に他人に転売し手放して良い」と言っていたな!こんなゴミ保険、どこかのバカにさっさと擦り付けて……!しかしどうやって探せば……明日朝一でバナナ投資銀行に相談しなければ!
不安いっぱいで落ち着かない夜を過ごしていると、あなたの前に一人の男が現れ、こう言います。
お困りのようですね。もし良かったら、あなたの頭痛の種をわたしが引き取ってあげましょう。
なんと!神様か!あなたはその救世主にすがるように、その男の足元にしがみ付きました。絶体絶命のピンチのときに突如として現れたヒーローは、「オレンジファンドのマネージャー」でした。彼は詳しい条件を説明します。
あなたの保険を引き取る条件はこうです。ゑもんさんのバナナ投資銀行に対する返済が滞りなく行われている間、あなたはオレンジファンドに毎年400万円の保険料を支払うこと。その代わり、オレンジファンドはゑもんさんが債務不履行した場合、彼の債務はあなたに代わってわたしが肩代わりします。
どうでしょう、この条件でよろしければ、あなたを困らせている「保険」をわたしが引き受けて差し上げましょう。
・提示された保険料は割高?割安?
なんだって!毎年400万円!わたしはそんなに割高な保険料をオレンジファンドに払わなければならないのか!バナナ投資銀行から毎年100万円の保険料は入ってくるが、差額の300万円は自腹で足さなければならないのか!
少しの間あなたは悩みます。しかし今のゑもんのヤロウの状況から、1億円の借金を背負わされるのは時間の問題、もはや選択の余地もありません。いやでも、しかし……。
自腹で毎年差引マイナス300万円は確かに痛い、でも1億円を肩代わりするよりは全然マシだ。ゑもんのヤロウが債務不履行を起こしたら、自分まで破産してしまう。まるでドミノ倒しだ。1億円の返済を肩代わりする義務から解放されるには、オレンジファンドが持ってきたこの話に乗るしか方法はないのか……。
一つ良いですか?わたしの長年の勘ですがこのケース、時間が経てば経つほどゑもんさんの返済が滞る確率が高まり、あなたの支払うべき保険料はどんどん高くなります……今だからこそ「たったの」400万円という割安な保険料で済むのですよ。こうなってしまった以上、もうあなたに選択の余地は残されていないのでは……?
「オレンジファンドのマネージャー」は困惑するあなたの背中をポンっと押すようにそう囁きました。あなたは深いため息の後、ついに降参してこの「保険」を買い戻しました。
・借金が自由に転売され独り歩き
オレンジファンドとの新しい契約書にサインをして愕然と肩を落とすも、内心はホッとしたあなたは、「オレンジファンドのマネージャー」に腹を割って教えてほしいと、この奇妙な「保険」の詳細を尋ねました。
ゑもんのヤロウの借金1億円が本人のいないところで、自由に転売され独り歩きしているのはなぜ?どうしてもそのカラクリを知りたかったのです。
(次号に続きます)