東日本大震災の翌週、3営業日目。3月16日水曜日。
この日は波乱の一週間の中で小休止的な一日でした。とは言っても混乱の渦中には違いありません。昨日から幾分か(それでも普段のボラティリティからすれば大幅に!)反発して始まった日経平均は、この日も一向に好転する気配のない福島第一原発事故関係の材料が多くアナウンスされ、日通し10%を超える乱高下をしていました。
そして舞台は日本株からドル円相場へと移っていきました。
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(前号のつづき)
・2011年3月16日(水)東京市場オープン
■ゑもんさん_2011/03/16_09:12
日経平均株価、162.05円高8767.20円寄付
■ KEN さん_2011/03/17_00:25
【速報】EU Energy Chief(更新:03/17 00:11)
日本の原子力機関の状況、対処不能だ
日本の状況、大災害(catastrophic)に発展するリスクがある
・東京電力
日本一の超優良・超安定銘柄(のはずだった)である東京電力<9501>株は、3日連続のストップ安。震災前日からでは-60%超。ジャンク同然の扱いで同社株はマネーゲーム化、途方もない出来高を記録することができました。
≪成功報酬をもらえる人に原子力発電所を経営させてはいけない。金融リスクの管理もダメだ。彼らの報酬は、隠れた吹き飛ぶリスクを織り込んではいない。ダウンサイドのないインセンティブを与えてはいけない≫ 強さと脆さ<ナシーム・ニコラス・タレブ>
「ブラックスワン」の著者の本からの引用。震災前に邦訳された本ですが、的確過ぎて恐ろしい。
信者になる必要はありませんが、タレブの名著群は全てのオプション・トレーダーの必読書だと思います。巨大なインパクトをもたらす事象は起きる可能性がどんなに低くても無視してはいけない、これは警告と言えます。タレブの名著群は以下のリンクを参照してください。
福島第一原発の現場で、空から自衛隊のヘリコプターによる海水の投下が行われようとすると幾分か戻し、東京で東電や政府の会見が行われるとまた下落、マーケットは終始一喜一憂していました。
・ひまわり証券の証券事業撤退
信じられないことに(わたしのメイン口座でもある)証券大手、ひまわり証券が証券部門を廃止すると発表しました。ひまわり証券は昨日にオプション売玉上限をゼロ枚に緊急規制したばかりです。
第一速報は夕場の時間帯にありました。(公式発表は翌日17日)昨日の大暴落により顧客口座の追証が多発した結果、多額の立て替え金を強いられているとのこと。その額なんと80億円。ほとんどは回収できない見込み、ということ。
証券部門はもともと赤字続きだったようで、これからは店頭FXとCFDに特化するそうです。日経先物・オプション取引の手数料は業界最安値、取引ツールも使いやすかっただけに残念です。
ひまわり証券には出金手続きが殺到し、出金依頼をかけようとしても「しばらくお待ちください」の状態が週いっぱい続いたと聞いています。出金規制です。わたしは昨日に売りオプション建玉上限が「ゼロ枚」へと引き下げられたと同時に、口座の資金全額を出金依頼していたため、この日の朝一には銀行口座に届いており、資金の拘束からは逃れることができました。
・「追証は逃げたもの勝ち」という記事
「追証は逃げたもの勝ち」という記事が話題になりました。大そうな盛り上がりでした。わたしも今回は痛い目に遭った側ですが、このような考えの投資家が大勢いるのですね。
「ドカンと追証がくるまでオプション裸売りを繰り返せばよい」、この話題の最適解はこういうことでした。まぁ手筋としては古典的な単純手法なので意気揚々と語るほどのものでもありません。追証から逃れられるかどうかは知りませんが。
自分の立場が悪くなるとケツも拭かずに逃げる、という劣悪な顧客を多く抱えていることを知っている証券各社も、このような状況下で取引条件を厳しく規制してくるのは当然でしょう。証券会社も都合が悪くなると顧客を切り捨てることが今回の件で改めて明らかになったので、お互い様ですね。
「ロスカット口座事件」や「弁護士雇ったら即訴訟事件」を筆頭に、証券会社と顧客との間でさまざまなトラブルが発生していることが明らかになってきたのはこの頃です。
・日経平均の「セリングクライマックス」は既に終わっていた
結果的には、昨日の大暴落が日経平均の「セリングクライマックス」でした。しかし数分で10%もの値幅を平然と動き回る大変動の渦中では、そんなことは誰にもわかりません。安値は今後も更新されるのか否か、わかるはずはないのです。
買い手は更なる暴落に恐怖し、売り手は巨大なリバウンドに怯えなくてはなりません。そんな状況の中でマーケットに飛び込んでいく勇気は、打ちひしがれたばかりのわたしに残っていませんでした。結局わたしは凡人なのです。
ポジションを取ろうと行動を起こすことができたトレーダーは大バカか天才か、いずれにしても月並みの成績で終わるようなトレーダーではないのでしょう。
・ドル円80円割れ目前
通貨市場のほうはというと、日経平均とは様相が違いました。ロンドンタイムに入ってもドル円のジリ下げは止まらず、安値を更新。NYタイムには80円割れ目前まで迫っていました。
このとき意識されていた水準は79.75円、バブルも陰った1995年の4月19日AM9時すぎの史上最高値です。未曾有の大災害に伴う配当金の確保に、保険会社による大規模な円転が行われるというマーケットの「噂」でした。
「噂」でも「デマ」でも「ウソ」でも、動いてしまえばそれがマーケット。こういった材料に乗じて通貨マフィアが79.75を狙っているのは明らかでした。現値は80円割れ目前、既にロックオンされており状況は完全に「あかんヤツ」です。
コミュニティの賢明な友人トレーダーたちは差し迫った為替の大変動を察知し、次々とドル円をショートに傾けていきました。NYクローズから東京オープンまでの間の薄商いを狙って仕掛けてくる、通称「いつものアレ」のパターンではないだろうか、という読みです。
(次号につづく)
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