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■その5分足デイトレード・システムは、どのようなロジックだったのですか?
□1日57本の5分足をベースに特定の足型が条件に入ればエントリー、というような感じだね。基本的に足型は前後の足も合わせて複数本で構成されているんだ。これにトレンド・フィルターを掛けてシグナルにした。他にも初動から7・8本目にリバウンドが入るから利食いする、といったルールも設けていた。
デイトレードシステムは下落局面しか通用しなかった
■超短期型のロジックだったのですね。
□なかなか泥臭い手法でしょ(笑)。心身共にボロボロになってアルバイトをしていたとき、手元にあったのが毎日コピーをしていた5分足のチャートだったんだ。
それで「兎に角できることやってみよう」という感じで、在職中から考えていた手法と組み合わせてみたんだ。そうしたら結局、そのような5分足システムが出来上がったんだ。もちろんこれも机上のバックテストしかしなかった。
■いつ頃まで通用する手筋でしたか?
□2009年3月に日経平均が6800円で底を付けるまでは、この手筋で順当に稼ぐことができたよ。それまでは日足のボラティリティも大きかったし、世紀の下落相場というタイミングも良かった。このデイトレード・システムにとってマーケットのコンディションは最高だった。
■このデイトレード・システムは、マーケットが変わった現在の相場でも有効なのでしょうか?
□無理だね。このシステムは2009年4月以降の激しい上昇相場で、負け始めることになるんだ。結局は特定の相場付きのみ、つまりボラティリティの高い下落局面だけにしか通用しない手筋だったんだよ。
■なるほど。
□そんな感じで2009年の春には僕のデイトレード・システムは機能しなくなり再び稼げなくなった。でも口座残高は以前のようなじり貧状態ではなかった。資金は800万円まで膨れていたんだ。それに多少の自信は得ていたのでメンタルも健全だった。
■手筋が機能しなくなっても、以前のような危機感はあまりなかったようですね。
□ところがマーケットは春から夏にかけて、6800円から1万円まで上昇した。史上最大の上昇率だった。激しい上昇相場となったことで大きな損切りが多発した。僕は以前のデイトレード・システムで上手くいっていたこともあってデータや確率統計などを信じていた。
だからシステムが負け出したことで、もう訳がわかんなくなってしまった。800万円まで膨らんだ口座の資金も500万円まで減らしてしまって、再び危機感を感じ始めたんだ。
「勝ちパターン」が出現しなくなった
■口座資金の変動は激しいようですね。
□そう、勝ちも大きければ負けも大きかった。夏までに資金を35%以上もドローダウンさせてしまったのだから、また専業トレーダーになってから3か月間の悪夢の再来さ。
■当時とは違いジリ貧ではなかったけど焦りますね。
□そうだね。でも僕は落ち着いていた。腕組みして「うーん。さて、どうしたものか」といった感じで冷静だった。
■それでどうしたのです?
□相場が変わり自分の「勝ちパターン」が出現しなくなると途端に稼げなくなるのでは、今後はやっていけないと感じた。だから新しい「勝ちパターン」を身に付ける必要があった。
それで「リーマン・ショック」以降のチャートを観察しデータをいじくり回してみた。何か上昇相場やレンジ局面で有効と思えるトレードアイデアはないかと探したんだ。
■何か良い閃きはありましたか?
□上昇相場ではデイトレードではなく、もっと長い時間軸で相場を見なければいけないこと、レンジ相場ではなるべくトレードを控えること。それ以外には特に何も思いつかなかった。具体的なトレード方法は見つけることができなかったんだ。
■アイデアを探している間、トレードの方はストップしていたのですか?
□うん。損切りをするくらいなら何もしない方がまだマシだからね。ジリ貧でアルバイトをしていたときに学んだように、無駄なトレードはしないと決めていた。
2つの教訓
■ええ、覚えています。先ほど「努力して無駄なポジションを減らすことが利益につながる」と仰っていました。
□強烈な上昇相場のこの頃に学んだことは2つだ。勝ちも負けも大きく口座の浮き沈みが激しかった。つまり口座のサイズに対してあまりにもポジションサイズが大きすぎたんだ。トレードは生き残りのゲームなので、良いトレーダーであってもポジションサイズが大きすぎると生き残れない。連敗に耐えられずに破産してしまうんだ。
そこでトレードを続けていく上で最も重要な概念の一つとも言える「資金管理」や「ポジションサイジング」といったことを学んだ。これが1つ。
2つ目は、下落相場から上昇相場に転じて、今までの僕のやり方は通用しなくなった。パフォーマンスはガタ落ちになったことで、相場は変化しトレードのやり方も相場の変化に対応させていかなければならない、ということに気が付いた。
相場が変わったら今までと同じ目線で見ていてはダメなんだ。だからマーケットの節目・転換点といった変わり目には敏感にならないといけない。
この2点は今となっては当たり前のことだけど、当時は目からうろこの気付きだった。トレードをストップしている間にパンローリングのこの手の内容の本を読みまくったよ。
■再び失敗から重要な戒めを得ることができたわけですね。書籍についても後ほどお話を聞かせてください。
□ほんと、失敗から得るものは大きいね。でもそのころに経験した面白い話があるんだ。少し話が反れてしまうけど、いいかな?
■ええ、もちろんどうぞ。「KEN」氏はマーケットの話ではなく、余談の方が多いですね(笑)
□OK。僕のインタビューはこういう話のほうが良いと思うよ。僕はまだ相場の張り方云々や心構え云々を説くほど優秀なトレーダーでもないと自分では思っているしね。逆にこういった余談を聞いてもらって、何かを感じてもらえると嬉しいよ(笑)
※ここで語られた「余談」のシーンは、証券ディーラーの実務を垣間見ることができる貴重な場面であった。しかし推敲段階で本稿からはカットし、スピンオフとすることにした。
(次号につづく)
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